これまでのイースシリーズのサントラ感想はこちら。
雑感
EDイラストカードセットが付く初回生産限定盤のほう買ったんじゃないの?と思われるかもしれないが個人的にDVDトールケースサイズが気に入りませんでした。やはり棚に陳列した際にちゃんと綺麗に並ばないのがイヤなので…。普通に通常盤だけ出してくれればいいのにこうゆう商法をして欲しくなかったです。こうなるとじゃあいずれ出るイースXのOSTでもDVDトールサイズ版も出すんだよね?ってなるじゃないですか。
音質はヘッドホン「AKG K712 PRO」による判断ですが良好だと思います。音がおとなしかった閃IIIや暗かった閃IVや雑然としていたイースVIIIよりまとまりのある音質に仕上がっているのではないでしょうか。ただややのっぺりとしているかもしれません。音場もちょっと狭い感じを受けます。(以上、あくまでも個人の主観です)。それでも一般的には良い音質なことには変わりはないかと思います。
曲が残す余韻と次の曲に向けての心の準備を作る大事な曲間の余白時間は大体3~5秒と普通ぐらい。ハイレゾみたいに1秒しかなくても駄目、閃IVみたいに6秒もあっても駄目、いい感じの塩梅ですかね。ただ「PRISONCITY」など一部の曲のフェードアウト処理が雑なのが気になりました。もう2秒ぐらいなだらかにフェードアウトしてくれたら違和感なかったかも。あと今回やたらループせずそのまま終わる曲が多いです。「IL E'TAIT UNE FOIS」「TRANQUIL SILENCE」「TAKE IT EASY!」「BAR 'DANDELION'」「CHALLENGER'S ROAD」「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」「FORGOTTEN DAYS」などはフェードアウトせず終結部を作って終了。個人的にはやはりフェードアウトしてもらったほうがいいですかね。ただ雑なフェードアウトされるのならそのまま終わってくれたほうがいいですが。
全曲リピートはしておらず。ただCD1は43分、CD2も44分ぐらいしか収録していないのでコスパは悪いです。もちろん枚数嵩むから全曲リピートしてくれとは言いません、でも人気になることが必死なバトル系の曲だけでも (今作だとボス戦曲、グリムワルド曲、ダンジョン曲、フィールド曲など) は最低限リピートさせて欲しかったですね。音楽を重視するファルコムならそれぐらいのサービスはあっていいはず。もしそうする気がないのならCDの最大収録分数80分内にそれぞれを収めて2枚組に出来たのではと。例えばCD2を半分にしてCD1とCD3に収めるとCD1は余裕だがCD3が75分になるけどでも過去に閃の軌跡IIがCD2で78分収録していたので問題はないはずです。2枚組になっていたらイースVIIIのOST(完全版ではない初期版)と同じ値段2,980円(税抜)になっていたかもしれない。2枚組に収まるものをわざわざ3枚組にして3,500円で発売というのはよく分からないです…。
感想
全曲分書いたらきりがないので特に好きな曲や気になった曲のみ簡単な感想を書きます。まだ本編未プレイの方のためになるべくネタバレにならないよう書いているけどちょっとバレっぽくなってたら申し訳ありません。
IL ETAIT UNE FOIS(バルドゥーク入場、回想)・・・ふたりがバルドゥークに入ろうとするときの曲。可憐でメランコリックなメロディが心を打つ愛らしい曲。曲名はフランス語で「むかしむかし」と訳せて確かに最初に出てくるアコーディオンのフレーズはどことなくフランス感あります。とあるキャラの回想時の曲としても使われてそういった回想的なノスタルジーも掻き立てられサビで朗々と歌われると感慨深さも。ただ折角素敵な曲なのに確か本編ではそのシーンふたつしか使われず勿体なかったですね。
TRANQUIL SILENCE(各サブキャラとの出会い、忌み森など)・・・ヒゲモジャおっさんとの出会い時に初めて流れたときから心奪われた美しくも悲しいメロディ。笛とパーカッションが木霊する荒涼とした雰囲気の前半も味わい深いが後半ストリングスが入ってからは寂寥とした切なさが押し寄せていっそう心に沁み入ります。ゲーム中の会話で少し込み入った話とこの曲が合わさるとなんとも言えない感傷的な気持ちにさせてくれることしばしば。直訳すると「静かな静寂」という意味だがそれとは裏腹に何か変容していくドラマを根底に感じさせる曲ですね。
DREAMING IN THE GRIMWALD(グリムワルドの夜 [防衛戦=冥月の谷、魔刻の道])・・・しなやかに魅了するように舞うチェロと情熱的に絡み合うヴァイオリンのエキゾチックなメロディ。タンゴ的に沸き立つ躍動感を感じさせるユニークな曲。チープな音のヴァイオリンが逆にグリムワルドの夜の奇怪さを表しているかのよう。
PRISONCITY(第II部、III部バルドゥーク)・・・優美なAメロ、素朴なピチカートなどなだらかに歌うストリングスが心地いい。終始おおらかにメロディが紡がれどこか朝を思わせられる清爽な風も吹き込み、そして朝露が滴りバルドゥークの朝が明けてゆく。物語がまだ大きく動いていない前半バルドゥークに相応しい曲となりました。
STAGNANT POOL(貧困街、第VIII部バルドゥークなど)・・・チェロが虚ろに歌う中で雑然と鳴り響くパーカッション、後半はストリングスが虚空に木霊する、そういったまとまりの欠ける響きが貧困街の泥臭さを醸し出しているといえますかね。この曲を聴くたびに暗澹たる気持ちにさせられこのアプローチは効果を上げていました。
HEART BEAT SHAKER(慰みの地下道、タイムアタックメニュー)・・・流麗に歌うピアノとシンセが心地よくて爽快。Bメロからサビへの流れも鮮やか。サビでしなやかに絡み合うエレキとシンセは軽やかながらも静かな胸の高まりを感じさせられ小洒落た中にも熱いパッションを秘めた曲です。
CLOACA MAXIMA(クロアカマキシマ)・・・これが令和時代の新たな世界一格好いい下水道曲(クロアカマキシマとは古代ローマの「下水道」のこと)。勇壮、情熱、キャッチーさなど全てが凝縮されている0:38のメロディがとにかく至高。ヴァイオリンがニュアンス豊かに舞いエレキも華麗なパフォーマンスで魅了しベースも存在感をアピール。まさに役者の揃った極上の饗宴。
MONSTRUM SPECTRUM(ボス戦1)・・・PV曲で使われたときからイントロの勇猛な格好良さにしびれましたがフルで聴いても決して期待を裏切られることはありません。重厚なサウンドから湧き上がる剛毅なエネルギー、そしてサビで猛々しくパワーを迸らせる展開が鮮烈。サビ繰り返しで音程上げさらにヒートアップ。そのあとも熱気保ったままリピートに向けて高揚していく流れが見事。この理路整然とした構成が素晴らしいです。片方のボス戦曲「FEEL FORCE」みたいに無闇にメロディをいくつも紡がずとも造形を作り込むことでボス戦に相応しい威容は十分備えられるという良いお手本ですね。
BAR "DANDELION"(バー・ダンデリオン内)・・・お洒落ながらも可愛らしくてそれがシャンテたちバーの店員さんたちに似合ってます。冒険中よく聴くことになる曲だけに押し付けがましくなく耳心地が良い仕上がりになっているのはさすが。
DENOUEMENT(暖かいイベント)・・・フランス語で「大団円」的な意味。平板な音楽だがその淡白さが円満に解決をした平穏さを感じさせてくれました。変に語りすぎたり粘らない分聴き心地はスムーズ。
WALTZ FOR GRACE(第IV~VI部バルドゥーク)・・・執拗な反復と浮遊するように中身の薄いサウンドが曲名の優雅さとは真逆の喧騒感を生んでいるのがユニーク。センチメンタルな情感も漂うがそれがまだ混迷渦巻く物語の中盤におけるこの曲の立ち位置を感じさせはしました。
MARIONETTE, MARIONETTE(秘匿の道)・・・秘匿という割には美感を損ねるささくれ立ったノイジー音で自己顕示欲を剥き出し。それが騒動の渦中となった思わず耳と目を塞ぎたくなるようなあの人物たちらしくはあります。なんの気まぐれか密やかに歌い始める後半は少し大人な気品が漂いこれこそ秘匿というものでしょう。
A GOLDEN KEY CAN OPEN ANY DOOR(監獄内特区)・・・貴族のワルツ感のある雅なサウンドですがただ貴族然とした気品はなくどこか高慢さや嫌らしさが滲み出ているのがあくまでも囚人たちの集まる場所の音楽といえます。
PETITE FLEUR(暖かなイベント)・・・心地いいギターサウンドで包み込んでくれるこの曲はフランス語で「小さな花」という意味。今はまだ彼女の小さな想いだけどやがて大きく開花して咲き誇るのでしょう。それを見守っていくかのようにどこまでも続く暖かく優しい世界。
FORTRESS UNDERGROUND(井戸の横穴、旧き地下道、秘宝への道)・・・この手の曲調は定番なので感想で触れることは中々ないのですが今回は印象良好。エレキで勇ましくもり立てるイントロから格好良くて、地下道らしく空間的広がりと起伏に富んだ展開は中々に飽きさせません。
HEAT AND SPLENDOR(興行区)・・・賑わう興行区は祝祭感あふれるオーケストラサウンドが出迎えてくれました。闘牛が行われる場所ということもあり勇ましさ溢れる熱気に気分も高揚。サビ前に鳴り響くまさに輝き(SPLENDOR)のようなスレイベルの合図のような一撃が聴きもの。
IN PROFILE, ON BELFRY(貴族街、第VII部バルドゥークなど)・・・躍動するパーカッションが生み出す心地いいリズム、透明感溢れる響きの中で流れ出る清爽なメロディ。ピアノで奏でられる少し寂しさよぎるような表情に引き込まれます。アンビエントと叙情性の狭間、そういった落ち着いた雰囲気が今後起こり得る冒険を静かに告げるような。「TRANQUIL SILENCE」とは違うアプローチで音楽面から物語に深みを与えてくれる曲です。
DESERT AFTER TEARS(泣き骸丘陵)・・・クールなイントロから心をわしづかみ。エレキとヴァイオリンが交互に旋律を奏でるということでどことなくイースVIII「CRIMSON FIGHTER」のフィールド曲版といった趣き。エレキは儚げに響きギターは哀愁を漂わせる。そして疾走する切なくも熱いパッション。メロディに被さるハモンドオルガンがこれまた切なさに輪をかけいぶし銀の大人な色気漂う上質なサウンドにただただ酔いしれるばかり。イースらしい熱気をあらわしながらもサウダージな雰囲気で盛り上げる極上のフィールド曲。ゲーム音楽という垣根を越えた最早芸術音楽でしょう。
A QUARRY RUIN(石切場)・・・荘厳で神秘的なイントロがとにかく良いです。全編このテイストのままのほうが曲として印象付けられたかも。後半ではエレキのメロディで思わずダーナがよぎってしまいますが(THEOS-DE-ENDROGRAM)それはご愛嬌。
CATCH ME IF YOU CAN(ジリオン鉱山・旧坑道)・・・素っ頓狂な曲の中に値千金のキャッチーなメロディもあってなんとも玉石混交。バタバタした曲調はどことなく運動会の様相。旧坑道の面倒くさい攻略にマッチしている曲ではありました。
PRISON OF BALDUQ -YEARNING-(重要イベント)・・・ピアノソロによる最小限の編成だからこそこの曲に込められた想いがダイレクトに伝わります。”YEARNING”とは「憧れ」という意味。今回このバルドゥーク監獄を中心に時を超えて幾多のドラマを見てきた、彼ら彼女たちを思うと感慨にふけざるを得ない曲。
APRILIS(タイトル画面、重要イベント)・・・今作のもうひとつのメインテーマ。静謐に奏でられる美しくも悲しい曲。沈潜としたAメロ、想いがこみ上げてくるようなBメロ、意味深く旋律を刻むCメロ、曲終わりは一筋の光に手を伸ばすかのような。そして余韻を残すオルガンの響き。静かに耳を傾けるだけで彼女の想いが伝わってきます。今回の物語を思うと遠大な時の流れを感じさせてくれる静かながらも繊細なニュアンスに富んだドラマティックな曲です。
GLESSING WAY!(霊峰エルドラ、シエル峡谷道)・・・舞い降りるように颯爽としたイントロに惚れ惚れ。熱気渦巻くシンセとエレキの華麗な舞い。PV曲で散々使われていましたがある意味リード曲として最高にヒット。最初に使われたのは霊峰エルドラへの山登り曲としてですが個人的にはシエル峡谷道で流れたときが核心に迫っていく展開とリンクして盛り上げに大きく寄与しました。
FORGOTTEN DAYS(悲しいイベント)・・・色々と悲しい系イベントで使われていましたがやはり彼が絡むイベントのときが一番印象深いですね。忘れられた日々…まさに彼の慟哭や悲壮な想いが伝わってくるようなひしひしと胸に響く曲…。深い音色のピアノに交わるどこか虚ろなストリングスが哀愁を引き立て…。
GRIA RECOLLECTION(最終幕バルドゥーク)・・・清爽で典雅な雰囲気が漂うもどこかミステリアスさを醸し出すユニークな街曲。ハープは可憐に音を紡ぎチェロはノスタルジックに響く。そして左右で飛び交うシンセが華やかに街を彩りエレキは静かに気分を高揚させていく。あくまでも表面的な効果に過ぎず音楽的な深みは薄いですがしっかりとグリアの思い出は刻まれました。
INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT(重要イベント、ゲームオーバー)・・・公式サイトで使われている曲でイースIXの曲としては一番最初にお披露目。イントロのメロディで今作の世界観全てを言い表したといっても過言ではないはず。そういった表現力ではこれ以上ない曲でしょう。
WILD CARD(グリムワルドの夜 (奇襲戦)、ラスダンボス戦)・・・グリムワルドの夜にてラルヴァがスフィン付近にスポーンするようになってから切り替わる曲。戦闘の激化に合わせて音楽も白熱。ツーバス連打が炸裂し尋常ならざるビートを刻み沸き立つように熱く滾るエネルギーの放出は鬼気迫るような凄み。サビ繰り返しでさらに燃え上がるお馴染みの展開は劇的興奮を煽りに煽る。コーダへ向けて一心不乱に突き進んでいく様は実にスリリング。あまりの溢れ出るパッションにむしろアドルたちの勝利BGMになってる感がありますね。ちなみに奇襲が終わるとまた元のグリムワルド曲に戻りまた奇襲が始まるとこの曲に切り替わり、この繰り返しが独特の高揚感も生みました。そしてこの激情はグリムワルド曲に収まらずラスダンのボス戦曲としても使われ無類のカタストロフを刻むことに。
ANIMA ERGASTULUM(ラスボス戦)・・・ファルコム恒例の雄々しいオーケストラサウンドによるラスボス曲。後半「PRISON OF BALDUQ」のメロディがアレンジされて輝かしく鳴り響くところは意味合いを考えると実に感動的。この瞬間のために怪人たちもさらにプレイヤーもこれまで頑張ってきた。そして「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」を引用しグリムワルドの余韻も残す。物語性に富み戦いの最後を締めくくるに相応しいドラマティックな曲です。
PRISON OF BALDUQ -LIVE THE FUTURE-(重要イベント)・・・未来を生きる…まさに希望に満ち溢れた音楽。ふたつの場面で使われたがどちらもまさに万感胸に迫る感動を味わいました。ピアノでは寂しさを感じた「PRISON OF BALDUQ -YEARNING-」もストリングスに変わると全く違う表情に感じられるのがアレンジの妙。
NEW LIFE(エピローグ)・・・切ない余韻を感じさせつつも前向きな気持ちにさせてくれる晴れやかなお別れ。ヴァイオリンとピアノが冒険の思い出を追憶するように寂しく響くもすぐに新たな新生活へ向けてエール送るように後押し。最後はヴァイオリンも輪になって踊るように。そんな清爽で幸福感に満ち溢れた曲。明るくお別れが出来る、それが何よりの喜び。
DANDELION'S JOURNEY(エンディング)・・・そしてそれぞれ新たな冒険へ歩みだす。ハーモニカは口笛のように軽やかにヴァイオリンは暖かく包み込みトランペットは天使の祝福のように鳴り響く…。どこまでも優しい風合いが嬉しい。なんてこの世界は愛おしくも美しいんだろうか。まるで天上の音楽。そんな世界にしてくれたアドルたちに乾杯。最後にメインテーマ「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」を静かに奏でて今回の冒険の幕を下ろしました。
コンポーザー評
イースVIIIで「DANA」「LOST IN GREEN」「YOU'LL SEE OUT THE END OF THE TALES」といった名曲を生み出したjdkメンバー園田隼人氏は今作も大多数の曲を手掛けておられます。イースVIIIでは36曲、閃IIIでは42曲、閃IVでは34曲に引き続き相当な作業量。イースVIIIでは破竹の勢いでしたが個人的に閃III、IVでは精彩を欠いていたように思え実際あまり好きになれる曲が少なく世間的にも評価される曲はあまりなかったのではと思います。特に閃IVは結構荒れていた。なので今作はどうかなと心配していましたが「DECISION」で最高のスタートを切りました。どうやら園田氏は作風的にツヴァイ2やセルセタの樹海、イースVIIIなど土着的な作品のほうが適正あるのかもしれませんね。「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」はこのゲームの代表曲。この一聴してすぐに世界観を掴めるメロディを作り出せたのは氏の大勝利。「PRISON OF BALDUQ」「EYES ON...」も良いです。氏は古くは「星の在り処」からそうですが内省的な曲になると感情の吐露がしなやかに発揮されるように思いますね。いわゆる劇伴的な「INQUISITION」も飽きさせず聴かせます。ただ確かに少々ルーチンワーク的な曲もありますが求められる場面に適した曲を少ない時間で数多く生み出すというのは並大抵のことではないはず。職人的なゲーム音楽作家としてもっと高く評価されて然るべきでしょう。
一方もうひとりのjdkメンバーでありイースVIIIで「SUNSHINE COASTLINE」「GENS D'ARMES」「CRIMSON FIGHTER」などの名曲を生み出した宇仁菅孝宏氏は今回7曲しか書かれておりません。閃IVでも13曲と少なめでしたが今回さらに減少されてしまったことに。昔から宇仁菅氏は寡作な方で半分近い曲を作ったのは閃IIと東ザナぐらいですが残念ながら今回もその例に漏れず。その分一つ一つの曲の完成度は非常に高くて特に「DESERT AFTER TEARS」は値千金の一曲。この曲だけで数曲分の価値はありますね。他にタイトル画面、ボス戦、エピローグ、エンディングなど重要どころの曲を引き続き任せられており依然としてファルコムからの信頼も厚いはず。音楽的にいっそう深みに達しており他の3人とは違う氏独自の世界を作っておられます。ただやはり曲を聴ける機会が少ないのは寂しい限り。もしかして当初からこれぐらいの曲しか書く予定がなかったのかもしれませんね。普通にSEや音声編集の比重が高かったか兼業している他の職務に移行したか他の部署のヘルプに入ったか今度こそ次タイトルの制作に移行したか外注の真我氏を信頼して委ねてしまったとか…。あと氏のように一曲一曲を緻密に磨き上げるタイプだと曲をたくさん生み出すのが難しいというのもありますがそれにしても…。本来なら氏が作ったかもしれない(RICORDO、OVERCOME THE ROCKY PATH、THE VALLEY OF THE KINGSなどに相当する)曲が色々と散見されるのが悔しいところではあります。
ファルコム常連の外注コンポーザー神藤由東大氏は今回4曲。既にPV内の曲で使われファンの期待値を上げに上げまくった「GLESSING WAY!」や「CLOACA MAXIMA」などなど曲数は少なくてもどれも印象に残す曲を書かれていて流石の一言。やはり神藤氏の作るメロディラインは最高にエモい、アレンジもワンランク上のレベル、音源も上質、全てがプロとして一流の仕事です。既に「CLOACA MAXIMA」「GLESSING WAY!」がトップクラスに人気を博していますが個人的には「HEART BEAT SHAKER」がグッときました。神藤氏というと重厚なオーケストラ曲や華麗なロック曲のほうが人気になる傾向が強いですが自分はこういゆう軽めのタッチの曲のほうが好み。とにかく今作での神藤氏の仕事は素晴らしかったです。
そして同じく外注コンポーザーの真我光生氏。ここで宇仁菅氏の作曲量の問題が出てくることに。何故かと言うとその分を真我氏が補うかたちで量産しているからです。恐らくその数23曲と作曲量が全体の3分の1近くになっており外注という枠組みを大きく越えていまして。いわゆるいつもの明快なロック曲がある一方で閃IV「たそがれ緑道」「晴れ渡る空に」の延長線上にあるようなアコースティックな曲も今回たくさんあって曲数だけでも異例なのにこれまで園田氏や宇仁菅氏が作るような曲調(DENOUEMENT、A GOLDEN KEY CAN OPEN ANY DOORなど)の領域にも進出してしまっています。恐らく真我氏がこれまでのファルコムサントラを聴いてインスパイアされjdkメンバーのスタイルに合わせてきているのでしょうか。この曲数から分かるとおり真我氏は作曲速度が相当早いようです。社内の制作スケジュールを軽減するためにこのように重宝されているのか、それとも他の大人の事情があるのか、それかイースVIIIでのフレッシュなイースサウンドを再びということで期待掛けられ全面的に抜擢されたのでしょうかね。いずれにせよ宇仁菅氏の作曲数が割を食ってしまっているのは非常に残念。
まとめ
というわけで曲とOSTの仕様には不満があるもののある程度は満足しました。やはりイースシリーズの音楽は最高だということを改めて実感。色々と不満もありましたがそれらさえなければさらに素晴らしいアルバムになってたのにとつくづく惜しまれます。イースXはメモリアルな節目のタイトルになると思いますが一体どうなることやら。楽しみなようで不安です。
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