2003年8月リリースの『Parhelia Original Sound Track』という同人CDを買った。現実に存在しない仮想シューティングゲーム『Parhelia』のオリジナルサウンドトラックという”てい”のCD。プログラム以外、シナリオ、設定、音楽、PV的な映像をそれぞれが持ち寄って合作、いわゆる理系的な難しいことは抜きにして文系視点からSTGを作ったというわけだな。しかしこれまで自分も何枚か実際にプレイしていないゲームのサントラを買ってたけどいよいよ本当に存在さえもしていないゲームのサントラを買うとはねw

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ディレクションは2014年2月に鬼籍に入られたmirawi氏、シナリオはInterface氏、映像はKei氏、ビジュアルコンセプトはmirawi氏とInterface氏とKei氏が担当、そして音楽はZTS氏とmirawi氏が担当し全16曲を大体半分ずつで分担。不勉強ながらZTS氏はあまり知らないのだがmirawii氏はあのみらゐ氏でありファルコムに所属していた石橋渡氏でもある。2003年ということは大体『イースVI ナピシュテムの匣』の制作時期。同時進行かその前か後にこれらの曲を作っていたのだから興味深い。ただイースの頃ならではのテイストはあまり感じられず強いて共通点を挙げたらアンビエントだったりテクノだったりすることぐらい。似たメロディとかアレンジや使用楽器があるかなと思ったがやはりプロとしてイースはイース、同人活動は同人活動と区切っていたようだ。なのでいわゆるクサメロ的なファルコム節を期待するとはぐらかされる。強いてあげると「The calyxes of flowers」はメロディやアレンジから氏のテイストを感じるがむしろZTS氏の「The cinderella syndrome」に石橋氏ライクなメロディを感じられたりもした。

世界観などバックボーンはこの記事を読むと掴めてくる(Parhelia座談会)。ストーリーの大枠としてはAIの暴走が起こり抑えるために人類が戦ってるうちに自機をAIに解析され大量にコピー、それで人類側はジ・エンド。後半からAIによる人類殲滅作戦が始まり…ということらしい。戦いだけじゃなくパイロットの娘と母の交流、AIの苦悩など色々設定が込められていて思った以上に深い。シューティングだけに単純に敵を討ち滅ぼしてめでたしめでたしという展開じゃなく捻ってるのがユニークだ。記事には曲毎の解説や面白いウラ話が盛りだくさんでこれを読むと読まないとでは曲から受けるイメージが全然違う。正直なところアルバム通して聴いたとき最初は印象乏しかったんだけどこの記事読んだことによりガラリと印象はいい方向へ変わってひとつひとつの曲を深く意味を感じ取りながら聴くことが出来るようになった。お蔭ですっかりハマって何度も再生してる。こうゆうことだとサウンドトラックというよりはコンセプトアルバムに近いか。種別的にはそのほうが正しいだろうな。

記事から得た他の知識としてはラピュタ進行という言葉や2曲目「The hesitation for death」はmirawi氏の専門学校時の秘蔵曲だったこと、mirawi氏は2曲目を作るときまで仕事でジングル曲を作ったことがなかったこと、mirawi氏はこのアルバムの制作が仕事にもフィードバックされたこと、mirawi氏の当時の制作環境はApple G4-450とPerformerだったこと、曲はSEのことを考えて高音域減らさないといけないこと、など初めて知ることが多くてこうゆう記事を残してくれたのは本当にありがたい。あとmirawi氏はぐるみんの仕事から想像出来てたが音屋としては相当変態だったってことも改めて分かったなw

簡単に曲毎の印象を書いていこう。(トラックナンバー・曲名・シチュエーション・副題・コンポーザー名)

  • 01. The mom / opening / 「思い出をあげる」と、母は言った。 / ZTS ・・・ 颯爽と幕開けを飾るのはノリがいいシンセポップ。ただ中盤から切なげなピアノのメロディが顔を見せ悲劇めいた展開を暗示。
  • 02. The hesitation for death / select / 死への躊躇 / mirawi, ZTS(SE) ・・・ 実機さながらガシャコンとセレクトするもやはりどこか不穏。
  • 03. The cinderella syndrome / stage1 / ずっと、あなたが、好きでした。 / ZTS ・・・ 最初のステージだというのにいきなり悲壮的クライマックス。それでも奮い立たせるかのような哀愁漂うメロディが印象的。ブックレットにある母と娘の手紙と合わせて聴くとより意味深く切ない。
  • 04. The optimal clause / bossA / 脳内モルヒネ / mirawi / ・・・ 重厚なボスを表す威圧感と無機質感。後半の呻くようなボイスと叩きつけられる音が不気味で予兆を感じさせつつもまだ普通に戦えてる。
  • 05. The exclusion of obstacle / stage clear / 障害の排除 / mirawi ・・・ クールにあくまでもさり気なく勝利を刻む。
  • 06. The two cradles / stage2 / こどもらしく / mirawi ・・・ 透明感あふれるサウンドの中をありとあらゆる音が弾けて躍動。中間部では音階をひたすら延々と上下していく音の戯れ。後半にやっとメロディらしきものがあらわれ希望に向かって駆け抜けていくかのよう。まだ未来は明るい。
  • 07. The adolescent conflict / stage3 / ある日、老婆は少女の格好をして。 / ZTS ・・・ ミステリアスなコーラスが鎮魂歌のように木霊。グロテスクな音のうねりを蹴散らし軽やかに疾走していこうとするもここでコンフリクト。自身の亡霊に蝕まれる。その過程を描いた不気味な音のぶつかり合いが虚ろに空に響く。
  • 08. The blindness / alternate / ミネルヴァの梟は夜に飛ぶ / mirawi ・・・ 急転直下のように轟くオーケストラ。最後にピアノでなにか葬送的な余韻を感じさせる。
  • 09. The calyxes of flowers / stageI / 優等生の悩み / mirawi ・・・ 駆け抜けるようなシンセポップの中で行なわれるAIによる人類の殺戮。このスピード感が刹那的でもある。スティールパンが効果的に活躍する部分の軽妙さが得体の知れなさも醸し出す。mirawi氏は「死というものは快楽を伴うのではないか」という持論を記事で話していたがそのあとを思うと余計このサウンドの心地よさが物悲しく聴こえて感慨深い。
  • 10. The broken chairs / stageII / やさしいキスの探し方 / ZTS ・・・ 最後の生き残りとAIとの戦い。アンビエントにカオスな音響が最早接触する相手すらいなくなった物悲しさを煽り立てる。後半、子どもみたいな声が無邪気に「Kiss Me Please」と言ってるように聴こえるが届く相手はもういない。そしてそのままカオスが押し寄せる。
  • 11. The silent instructor / bossB / けれど水は水のまま / ZTS ・・・ ボーダーレスでノンジャンルな音楽の入り乱れ。まるで駄々をこねるかのような音のパトス。けれど物言わぬ敵。火と水の関係。お互い決して相容れないもの、という意味合いなんだろうか。
  • 12. The common tragedy / stageIII / 雪の降らない聖夜 / mirawi ・・・ 最終章は悲劇の戦いの果てにあるもの。後半に1曲目「The mom」のメロディが過ぎ去りし日々を追憶。戯けたような奇妙な音色だが逆にこの音だからこそこのやり切れないような味わい。最後に一瞬だけモノラルになり現実に戻される。
  • 13. The restaurant with many orders / ult. boss / ごきげんよう、さようなら。 / ZTS ・・・ 得体の知れない真のラスボスとの戦い。カセットテープが巻き戻るかのように時が戻りもうひとつの味方機があらわれ善戦するもテープはもみくちゃになり途絶える。ハッと目覚めたところはシロフォンが無垢に跳躍する別世界。夢オチと思わせられもする現実と虚構の狭間。ここで母子が再会するもすぐに去り行く。アルバム中で最もリスナーに想像を委ねる曲といえる。
  • 14. The end of eden / ending / あなた誰? / mirawi ・・・ 弦楽四重奏が短いフレーズを延々と刻んでいく。どことなく現代音楽チック。全てはとあるゲーム世界のひとつの出来事なだけ、終わったからまた次に行こう、というドライな感情が支配。
  • 15. The akasic record / name entry / 花壇の踏み跡 / ZTS ・・・ STGに付き物の名前入力画面曲にもストーリー性が豊富。天国で手向けの花を添えたのだろうか。今作のキーワードのひとつである花。その花壇の意味、足跡の正体、など想像は尽きない。最後はこれまでを振り返るようにノスタルジーな余韻を残しつつ所詮はゲーム世界というわけでプツリと電源オフ。
  • 16. The last supper / game over / 最後の晩餐 / mirawi ・・・ ある意味約束されたゲームオーバー曲。

こうして解説、ブックレットに書かれたポエムと合わせて聴いて読んでいくとこれは音楽による聴く物語だなと思わせられた。その状況にあわせた映像を妄想しながら聴く楽しみもあるな。なのでお気に入り曲は全曲ということになる。どれも物語のピースに欠かせない曲だ。

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その映像だが「PARHELIA.AVI」という4分13秒の動画データもCDに収められている。さすがに今見ると色褪せて見えてしまうが2003年当時の同人作品としては十分にクオリティ高くてこれで解像度が320x240の倍ぐらいあったら今でも過不足なく見れるレベルだったかもしれない。特に娘さんが出てくる辺りは繊細な映像が美しい。個人的には緑生い茂る在りし日の地上、花が散るシーン、Parhelia部隊の発進シーンが良かった。娘さんもお綺麗だが悲劇が待ち受けてる死地に赴くわけで切ない。

当初はmirawi氏の音楽目当てだったがトータルで思ったより得るものが大きいアルバムだった。ZTS氏の曲もmirawi氏に決して引けを取らない充実ぶり。むしろ華麗で緻密なシンセワークはmirawi氏の上をいく実力かもしれない。とはいえ両者のセンスと技術は高いレベルで拮抗。ファルコムのサントラのように複数コンポーザー制でネックとなる個々の実力の違いによるクオリティのばらつきはこの二人に限っては気にせずとも聴けるのはありがたい。

最後に音質だが低音から高音まで十分に出ていて音圧も適正。音が引っ込んでることもない。デジタルチューンに釣り合うクリアで澄んだサウンドだ。曲間は大体2秒ぐらいと短めだがストーリー性が重要なこのアルバムでは短いほうがいいだろう。

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