自分としては珍しく10日間でクリアしちゃったイースIX。お蔭でサントラが発売されるまで一ヶ月半ぐらい待ちぼうけくらってしまったがようやくCD音質で聴ける喜びを味わえた。というわけで今回も簡単にサントラと曲の感想を書いていきます。

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これまでのイースシリーズのサントラ感想はこちら。

雑感

え?EDイラストカードセットが付く初回生産限定盤のほう買ってないの?と思われるかもしれないが個人的にDVDトールケースサイズが気に入らなかった。やはり棚に陳列した際にちゃんと綺麗に並ばないのがイヤ。普通に通常盤だけ出してくれればいいのにこうゆう商法をして欲しくなかったな。こうなるとじゃあいずれ出るイースXのOSTでもDVDトールサイズ版も出すんだよね?

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音質はヘッドホン「AKG K712 PRO」による判断だが良好だと思う。音がおとなしかった閃IIIや暗かった閃IVや雑然としていたイースVIIIよりまとまりのあるマスタリングではなかろうか。ただややのっぺりとしているかもしれない。音場もちょっと狭い感じを受ける。そうゆうこともあり少し聴き疲れしやすい音に仕上がっているかもしれない(あくまでも個人の主観です)。それでも一般的には良い音質なことに変わりはないだろう。

曲が残す余韻と次の曲に向けての心の準備を作る大事な曲間の時間は大体3~5秒と普通ぐらいだろう。ハイレゾみたいに1秒しかなくても駄目、閃IVみたいに6秒もあっても駄目。いい感じの塩梅。ただ「PRISONCITY」のフェードアウト処理が雑なのが気になった。もう2秒ぐらいなだらかにフェードアウトしてくれたら違和感なかったのに。あと今回やたらループせずそのまま終わる曲が多い。「IL E'TAIT UNE FOIS」「TRANQUIL SILENCE」「TAKE IT EASY!」「BAR 'DANDELION'」「CHALLENGER'S ROAD」「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」「FORGOTTEN DAYS」などフェードアウトせず終結部を作って終了。個人的にはやはりフェードアウトしてもらったほうがいいかな。ただ雑なフェードアウトされるのならそのまま終わってくれたほうがいい。

当たり前だけど全曲リピートはしていないよね。知ってた。ただCD1は43分、CD2も44分ぐらいしか収録していないのだからコスパは悪い。もちろん枚数嵩むから全曲リピートしてくれとは言わない。でも人気になることが必死なバトル系の曲だけでも (今作だとボス戦曲、グリムワルド曲、ダンジョン曲、フィールド曲など) は最低限リピートさせて欲しかった。音楽を重視するファルコムならそれぐらいのサービスはあっていいはず。もしそうする気がないのならCDの最大収録分数80分内にそれぞれを収めて2枚組に出来たのではと思う。例えばCD2を半分にしてCD1とCD3に収めるとCD1は余裕だがCD3が75分になるけどでも過去に閃の軌跡IIがCD2で78分収録していたので問題はないはず。2枚組になっていたらイースVIIIのOST(完全版ではない初期版)と同じ値段2,980円(税抜)になっていたかもしれない。2枚組に収まるものをわざわざ3枚組にして3,500円で発売というよく分からないというか舐めた商法だ。一体どうゆう考えなのだろう?

感想

全曲分書いたらきりがないので特に好きな曲や気になった曲のみ簡単な感想を書いていこう。まだ本編未プレイの方のためになるべくネタバレにならないよう書いているけどちょっとバレっぽくなってたら申し訳ない。

HELLO GRIMWALD(ジングル [ゲーム起動時])・・・今作のオープニング曲です。0:12秒にエッセンスが全て詰まっているといって過言ではない。ほんとか?

IL ETAIT UNE FOIS(バルドゥーク入場、回想)・・・ふたりがバルドゥークに入ろうとするときの曲。可憐でメランコリックなメロディが心を打つ愛らしい曲だ。曲名はフランス語で「むかしむかし」と訳せて確かに最初に出てくるアコーディオンのフレーズはどことなくフランス感ある。とあるキャラの回想時の曲としても使われてそういった回想的なノスタルジーも掻き立てられサビで朗々と歌われると感慨深さも。ただ折角素敵な曲なのに確か本編ではそのシーンふたつしか使われず勿体なかった。

TRANQUIL SILENCE(各サブキャラとの出会い、忌み森など)・・・ヒゲモジャおっさんとの出会い時に初めて流れたときから心奪われた美しくも悲しいメロディ。笛とパーカッションが木霊する荒涼とした雰囲気の前半も味わい深いが後半ストリングスが入ってからは寂寥とした切なさが押し寄せていっそう心に沁み入る。ゲーム中の会話で少し込み入った話とこの曲が合わさるとなんとも言えない感傷的な気持ちにさせてくれることしばしばだった。直訳すると「静かな静寂」という意味だがそれとは裏腹に何か変容していくドラマを根底に感じさせる曲だ。

DREAMING IN THE GRIMWALD(グリムワルドの夜 [防衛戦=冥月の谷、魔刻の道])・・・しなやかに魅了するように舞うチェロと情熱的に絡み合うヴァイオリンのエキゾチックなメロディ。タンゴ的に沸き立つ躍動感を感じさせるユニークな曲。チープな音のヴァイオリンが逆にグリムワルドの夜の奇怪さを表しているかのようではある。

PRISONCITY(第II部、III部バルドゥーク)・・・優美なAメロ、素朴なピチカートなどなだらかに歌うストリングスが心地いい。終始おおらかにメロディが紡がれどこか朝を思わせられる清爽な風も吹き込む。そして朝露が滴りバルドゥークの朝が明けてゆく。物語がまだ大きく動いていない前半バルドゥークに相応しい曲となった。

STAGNANT POOL(貧困街、第VIII部バルドゥークなど)・・・チェロが虚ろに歌う中で雑然と鳴り響くパーカッション、後半はストリングスが虚空に木霊する。そういったまとまりの欠ける響きが貧困街の泥臭さを醸し出しているといえる。この曲を聴くたびに暗澹たる気持ちにさせられこのアプローチは効果を上げていたのだろう。

HEART BEAT SHAKER(慰みの地下道、タイムアタックメニュー)・・・流麗に歌うピアノとシンセが心地よくて爽快。Bメロからサビへの流れも鮮やか。サビでしなやかに絡み合うエレキとシンセは軽やかながらも静かな胸の高まりを感じさせられ小洒落た中にも熱いパッションを秘めた曲だ。

CLOACA MAXIMA(クロアカマキシマ)・・・これが令和時代の新たな世界一格好いい下水道曲となる(クロアカマキシマとは古代ローマの「下水道」のこと)。勇壮、情熱、キャッチーさなど全てが凝縮されている0:38のメロディがとにかく至高。ヴァイオリンがニュアンス豊かに舞いエレキも華麗なパフォーマンスで魅了しベースも存在感をアピール。まさに役者の揃った極上の饗宴だ。

MONSTRUM SPECTRUM(ボス戦1)・・・PV曲で使われたときからイントロの勇猛な格好良さにしびれたがフルで聴いても決して期待を裏切られることはなかった。重厚なサウンドから湧き上がる剛毅なエネルギー、そしてサビで猛々しくパワーを迸らせる展開が鮮烈。サビ繰り返しで音程上げさらにヒートアップ。そのあとも熱気保ったままリピートに向けて高揚していく流れが見事。この理路整然とした構成が素晴らしい。片方のボス戦曲「FEEL FORCE」みたいに無闇にメロディをいくつも紡がずとも造形を作り込むことでボス戦に相応しい威容は十分備えられるという良いお手本だ。

BAR "DANDELION"(バー・ダンデリオン内)・・・お洒落ながらも可愛らしくてそれがシャンテたちバーの店員さんたちに似合ってる。冒険中よく聴くことになる曲だけに押し付けがましくなく耳心地が良い仕上がりになっているのはさすがといえる。

DENOUEMENT(暖かいイベント)・・・フランス語で「大団円」的な意味。平板な音楽だがその淡白さが円満に解決をした平穏さを感じさせてくれる。変に語りすぎたり粘らない分聴き心地はスムーズだ。

WALTZ FOR GRACE(第IV~VI部バルドゥーク)・・・執拗な反復と浮遊するように中身の薄いサウンドが曲名の優雅さとは真逆の喧騒感を生んでいるのがユニーク。センチメンタルな情感も漂うがそれがまだ混迷渦巻く物語の中盤におけるこの曲の立ち位置を感じさせはした。

MARIONETTE, MARIONETTE(秘匿の道)・・・秘匿という割には美感を損ねるささくれ立ったノイジー音で自己顕示欲を剥き出し。それが騒動の渦中となった思わず耳と目を塞ぎたくなるようなあの人物たちらしくはある。なんの気まぐれか密やかに歌い始める後半は少し大人な気品が漂いこれこそ秘匿というものだろう。

A GOLDEN KEY CAN OPEN ANY DOOR(監獄内特区)・・・貴族のワルツ感のある雅なサウンドだがただ貴族然とした気品はなくどこか高慢さや嫌らしさが滲み出ているのがあくまでも囚人たちの集まる場所の音楽といえる。

PETITE FLEUR(暖かなイベント)・・・心地いいギターサウンドで包み込んでくれるこの曲はフランス語で「小さな花」という意味。今はまだ彼女の小さな想いだけどやがて大きく開花して咲き誇るのだろう。それを見守っていくかのようにどこまでも続く暖かく優しい世界。

FORTRESS UNDERGROUND(井戸の横穴、旧き地下道、秘宝への道)・・・この手の曲調は定番過ぎて感想で触れることはないのだが今回は例外的に良い。エレキで勇ましくもり立てるイントロから良好。地下道らしく空間的広がりと起伏に富んだ展開は中々に飽きさせない。

HEAT AND SPLENDOR(興行区)・・・賑わう興行区は祝祭感あふれるオーケストラサウンドが出迎えてくれた。闘牛が行われる場所ということもあり勇ましさ溢れる熱気に気分も高揚。サビ前に鳴り響くまさに輝き(SPLENDOR)のようなスレイベルの合図のような一撃が聴きものだ。

IN PROFILE, ON BELFRY(貴族街、第VII部バルドゥークなど)・・・躍動するパーカッションが生み出す心地いいリズム、透明感溢れる響きの中で流れ出る清爽なメロディ。ピアノで奏でられる少し寂しさよぎるような表情に引き込まれる。アンビエントと叙情性の狭間、そういった落ち着いた雰囲気が今後起こり得る冒険を静かに告げるような。「TRANQUIL SILENCE」とは違うアプローチで音楽面から物語に深みを与えてくれる曲だ。

DESERT AFTER TEARS(泣き骸丘陵)・・・クールなイントロからもう心をわしづかみ。エレキとヴァイオリンが交互に旋律を奏でるということでどことなくイースVIII「CRIMSON FIGHTER」のフィールド曲版といった趣き。エレキは儚げに響きギターは哀愁を漂わせる。そして疾走する切なくも熱いパッション。メロディに被さるハモンドオルガンがこれまた切なさに輪をかける。いぶし銀の大人な色気漂う上質なサウンドにただただ酔いしれるばかり。イースらしい熱気をあらわしながらもサウダージな雰囲気で盛り上げる極上のフィールド曲。ゲーム音楽という垣根を越えた最早芸術音楽だ。

A QUARRY RUIN(石切場)・・・荘厳で神秘的なイントロがとにかく良い。全編このテイストのままのほうが曲として印象付けられたかもしれない。後半ではエレキのメロディで思わずダーナがよぎってしまうが(THEOS-DE-ENDROGRAM)それはご愛嬌。

CATCH ME IF YOU CAN(ジリオン鉱山・旧坑道)・・・素っ頓狂な曲の中に値千金のキャッチーなメロディもあってなんとも玉石混交。バタバタした曲調はどことなく運動会の様相。旧坑道の面倒くさい攻略にマッチしている曲ではある。

PRISON OF BALDUQ -YEARNING-(重要イベント)・・・ピアノソロによる最小限の編成だからこそこの曲に込められた想いがダイレクトに伝わる。”YEARNING”とは「憧れ」という意味。今回このバルドゥーク監獄を中心に時を超えて幾多のドラマを見てきた。彼ら彼女たちを思うと感慨にふけざるを得ない曲だ。

APRILIS(タイトル画面、重要イベント)・・・今作のもうひとつのメインテーマ。静謐に奏でられる美しくも悲しい曲。沈潜としたAメロ、想いがこみ上げてくるようなBメロ、意味深く旋律を刻むCメロ、曲終わりは一筋の光に手を伸ばすかのような。そして余韻を残すオルガンの響き。静かに耳を傾けるだけで彼女の想いが伝わってくる。今回の物語を思うと遠大な時の流れを感じさせてくれる静かながらも繊細なニュアンスに富んだドラマティックな曲だ。

GLESSING WAY!(霊峰エルドラ、シエル峡谷道)・・・舞い降りるように颯爽としたイントロに惚れ惚れ。熱気渦巻くシンセとエレキの華麗な舞いだ。PV曲で散々使われていたがある意味リード曲として最高にヒットした。最初に使われたのは霊峰エルドラへの山登り曲としてだが個人的にはシエル峡谷道で流れたときが核心に迫っていく展開とリンクして盛り上げに大きく寄与した。

FORGOTTEN DAYS(悲しいイベント)・・・色々と悲しい系イベントで使われていたがやはり彼が絡むイベントのときが一番印象深い。忘れられた日々…まさに彼の慟哭や悲壮な想いが伝わってくるようなひしひしと胸に響く曲だ…。深い音色のピアノに交わるどこか虚ろなストリングスが哀愁を引き立てる…。

GRIA RECOLLECTION(最終幕バルドゥーク)・・・清爽で典雅な雰囲気が漂うもどこかミステリアスさを醸し出すユニークな街曲。ハープは可憐に音を紡ぎチェロはノスタルジックに響く。そして左右で飛び交うシンセが華やかに街を彩りエレキは静かに気分を高揚させていく。あくまでも表面的な効果に過ぎず音楽的な深みは薄いがしっかりとグリアの思い出は刻まれた。

INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT(重要イベント、ゲームオーバー)・・・公式サイトで使われている曲でイースIXの曲としては一番最初にお披露目した。イントロのメロディで今作の世界観全てを言い表したといっても過言ではない。そういった表現力ではこれ以上ない曲だろう。

WILD CARD(グリムワルドの夜 (奇襲戦)、ラスダンボス戦)・・・グリムワルドの夜にてラルヴァがスフィン付近にスポーンするようになってから切り替わる曲。戦闘の激化に合わせて音楽も白熱。ツーバス連打が炸裂し尋常ならざるビートを刻み沸き立つように熱く滾るエネルギーの放出は鬼気迫るような凄み。サビ繰り返しでさらに燃え上がるお馴染みの展開は劇的興奮を煽りに煽る。コーダへ向けて一心不乱に突き進んでいく様は実にスリリング。あまりの溢れ出るパッションにむしろアドルたちの勝利BGMになってる感がある。ちなみに奇襲が終わるとまた元のグリムワルド曲に戻りまた奇襲が始まるとこの曲に切り替わる、この繰り返しが独特の高揚感も生んだ。そしてこの激情はグリムワルド曲に収まらずラスダンのボス戦曲としても使われ無類のカタストロフを刻んだ。

ANIMA ERGASTULUM(ラスボス戦)・・・ファルコム恒例の雄々しいオーケストラサウンドによるラスボス曲。後半「PRISON OF BALDUQ」のメロディがアレンジされて輝かしく鳴り響くところは意味合いを考えると実に感動的。この瞬間のために怪人たちもさらにプレイヤーもこれまで頑張ってきた。そして「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」を引用しグリムワルドの余韻も残す。物語性に富み戦いの最後を締めくくるに相応しいドラマティックな曲だ。

PRISON OF BALDUQ -LIVE THE FUTURE-(重要イベント)・・・未来を生きる…まさに希望に満ち溢れた音楽。ふたつの場面で使われたがどちらもまさに万感胸に迫る感動を味わった。ピアノでは寂しさを感じた「PRISON OF BALDUQ -YEARNING-」もストリングスに変わると全く違う表情に感じられるのがアレンジの妙。

NEW LIFE(エピローグ)・・・切ない余韻を感じさせつつも前向きな気持ちにさせてくれる晴れやかなお別れ。ヴァイオリンとピアノが冒険の思い出を追憶するように寂しく響くもすぐに新たな新生活へ向けてエール送るように後押し。最後はヴァイオリンも輪になって踊るように。そんな清爽で幸福感に満ち溢れた曲。明るくお別れが出来る、それが何よりの喜び。

DANDELION'S JOURNEY(エンディング)・・・そしてそれぞれ新たな冒険へ歩みだす。ハーモニカは口笛のように軽やかにヴァイオリンは暖かく包み込みトランペットは天使の祝福のように鳴り響く…。どこまでも優しい風合いが嬉しい。なんてこの世界は愛おしくも美しいんだろうか。まるで天上の音楽だ。そんな世界にしてくれたアドルたちに乾杯。最後にメインテーマ「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」を静かに奏でて今回の冒険の幕を下ろした。

コンポーザー評

イースVIIIで「DANA」「LOST IN GREEN」「YOU'LL SEE OUT THE END OF THE TALES」といった名曲を生み出したjdkメンバー園田隼人氏は今作も大多数の曲を手掛けておられる。イースVIIIでは36曲、閃IIIでは42曲、閃IVでは34曲に引き続き相当な作業量だ。イースVIIIでは破竹の勢いだったが個人的に閃III、IVでは精彩を欠いていたように思え実際あまり好きになれる曲が少なく世間的にも評価される曲はあまりなかったのではと思う。特に閃IVは結構荒れていた。なので今作はどうかなと心配していたが「DECISION」で最高のスタートを切った。どうやら園田氏は作風的にツヴァイ2やセルセタの樹海、イースVIIIなど土着的な作品のほうが適正あるのかもしれない。「INVITATION TO THE CRIMSON NIGHT」はこのゲームの代表曲。この一聴してすぐに世界観を掴めるメロディを作り出せたのは氏の大勝利。「PRISON OF BALDUQ」「EYES ON...」も良い。氏は古くは「星の在り処」からそうだが内省的な曲になると感情の吐露がしなやかに発揮されるように思う。いわゆる劇伴的な「INQUISITION」も飽きさせず聴かせる。ただ確かにルーチンワーク的な曲もあるが求められる場面に適した曲を少ない時間で数多く作り出すというのは並大抵のことではない。職人的なゲーム音楽作家としてもっと高く評価されて然るべきだと思う。

一方もうひとりのjdkメンバーでありイースVIIIで「SUNSHINE COASTLINE」「GENS D'ARMES」「CRIMSON FIGHTER」などの名曲を生み出した宇仁菅孝宏氏は今回7曲しか書かれていない。閃IVでも13曲と少なめだったがさらに減少されてしまった。昔から宇仁菅氏は寡作な方で半分近い曲を作ったのは閃IIと東ザナぐらいだが残念ながら今回もその例に漏れず。その分一つ一つの曲の完成度は非常に高い。特に「DESERT AFTER TEARS」は値千金の一曲。この曲だけで数曲分の価値はある。他にタイトル画面、ボス戦、エピローグ、エンディングなど重要どころの曲を引き続き任せられており依然としてファルコムからの信頼も厚い。音楽的にいっそう深みに達しており他の3人とは違う氏独自の世界を作っておられる。ただやはり曲を聴ける機会が少ないのは寂しい限りである。もしかして当初からこれぐらいの曲しか書く予定がなかったのかもしれない。普通にSEや音声編集の比重が高かったか兼業している他の職務に移行したか他の部署のヘルプに入ったか今度こそ次タイトルの制作に移行したか外注の真我氏を信頼して委ねてしまったか…。あと氏のように一曲一曲を緻密に磨き上げるタイプだと曲をたくさん生み出すのが難しいというのもあるがそれにしても…。本来なら氏が作ったかもしれない(RICORDO、OVERCOME THE ROCKY PATH、THE VALLEY OF THE KINGSなどに相当する)曲が色々と散見されるのが悔しいところである。

ファルコム常連の外注コンポーザー神藤由東大氏は今回4曲。既にPV内の曲で使われファンの期待値を上げに上げまくった「GLESSING WAY!」や「CLOACA MAXIMA」などなど曲数は少なくてもどれも印象に残す曲を書かれていて流石の一言。やはり神藤氏の作るメロディラインは最高にエモい、アレンジもワンランク上のレベル、音源も上質、全てがプロとして一流の仕事だ。既に「CLOACA MAXIMA」「GLESSING WAY!」がトップクラスに人気を博しているが個人的には「HEART BEAT SHAKER」がグッときた。神藤氏というと重厚なオーケストラ曲や華麗なロック曲のほうが人気になる場合が多いけど自分はこういゆう軽めのタッチの曲のほうが好み。とにかく今作での神藤氏の仕事は素晴らしかった。個人的には閃IVより良い。

そして同じく外注コンポーザーの真我光生氏。ここで宇仁菅氏の作曲量の問題が出てくる。何故かと言うとその分を真我氏が補うかたちで量産しているからである。恐らくその数23曲と作曲量が全体の3分の1近くになっており外注という枠組みを大きく越えている。いわゆるいつもの明快なロック曲がある一方で閃IV「たそがれ緑道」「晴れ渡る空に」の延長線上にあるようなアコースティックな曲も今回たくさんあって曲数だけでも異例なのにこれまで園田氏や宇仁菅氏が作るような曲調(DENOUEMENT、A GOLDEN KEY CAN OPEN ANY DOORなど)の領域にも進出してしまっている。恐らく真我氏がこれまでのファルコムサントラを聴いてインスパイアされjdkメンバーのスタイルに合わせてきているのだろう。この曲数から分かるとおり真我氏は作曲速度が相当早いようだ。社内の制作スケジュールを軽減するためにこのように重宝されているのか、それとも他の大人の事情があるのか、それかイースVIIIでのフレッシュなイースサウンドを再びということで期待掛けられ全面的に抜擢されたのか。いずれにせよ宇仁菅氏の作曲数が割を食ってしまっているのは非常に残念である。真我氏の作る音楽は正直言うとファルコムサウンドとは相容れずミスマッチだ。音源、ミキシング、技術力、発想力、構成力、センス、などなどどれをとっても拙い。ただエレキやシンセをフィーチャーした曲よりは「DREAMING IN THE GRIMWALD」「DENOUEMENT」「WALTZ FOR GRACE」など弦楽器主体のアコースティックな曲のほうは”音楽”として聴けるように思う。「GRIA RECOLLECTION」も例外的に悪くはない、いやむしろ良い。つまりテンポが遅ければ遅いほど何故かまともになる…意味が分からない。なので全ては否定しないが一部の自己主張の激しすぎる曲にはほとほと困ったものである。ちなみにこの真我氏への不満は単なる個人の主観の問題ではなく現に海外では真我氏叩きがかなり多い。それだけ氏の問題点は非常に多いということだ。ま、そういった諸々はAmazonレビューにも”AGNIS”名義で書いていますのでご参考に。賛同してくださった方が11名いらっしゃるけどもし参考にならなかったボタンがあった時代のAmazonレビューなら果たしてどうなっただろうかとは思うが…。

まとめ

というわけで曲とOSTの仕様には不満があるもののある程度は満足した。やはりイースシリーズの音楽は最高だということを改めて実感。実感しただけに…いや最早何も言わまい。それさえなければ素晴らしいアルバムになったのにとつくづく惜しまれる。イース10はメモリアルな節目のタイトルになるが一体どうなることやら。楽しみなようで不安…不安しかないか。もう諦めてる。受け入れよう。

追加のマイナス点というか要望としてはもう少しサントラの発売サイクルを縮められないかなとは思う。出来るならガストのようにゲームと同時発売してくれたら最高なんだが。といってもファルコムのように小さな企業ではやはり大変なことなんだろう。それでもどうにか頑張ってもらいたいね。

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コメント

  1. 名無しさん | mhCPU9yQ

    No title

    自分はFEEL FORCEはかなり好きな曲です
    サビの部分のメロディがとても良い
    前作の中ボス曲のクリムゾンファイターが自分は全然ダメだったので今回のボス戦は両方当たりかなぁと感じました
    knock on noxも普通に名曲だと思うけどなぁ

    HEART BEAT SHAKER、FORTRESS UNDERGROUND、HEAT AND SPLENDOR
    はちょっと安っぽい感じがして自分はダメでした・・・
    街の音楽もWALTZ FOR GRACE>>>>>>HEAT AND SPLENDOR、IN PROFILE, ON BELFRYかなぁ

    宇仁菅孝宏氏の曲は(特にサビの)メロディがとっちらかってて毎回ちょっと聴きぐるしい印象
    前作のジャンダルムとかサビまでは良かったのにサビのメロディがいい加減でずっこけた思い出



    ( 04:41 [Edit] )

  2. 管理人 | tCjwfjLE

    コメントありがとうございます。

    結局好き嫌いは人それぞれですからね。色々評価が違っていいと思います。
    個人的にKNOCK ON NOXは繰り返しが多すぎです。質の悪い音源(特にエレキとヴァイオリン)と喧しいドラムを延々と聴かされるのは厳しい。WALTZ FOR GRACEは自分も嫌いではないですよ。

    仰るとおり宇仁菅さんはメロディが一番のウィークポイントですね。
    特に速いテンポの曲はメロディを犠牲にしてグルーヴ感と曲としてのまとまりを優先している場合が時々あります。Belief、Erosion of MadnessやDESERT AFTER TEARSもそんな感じを受けます。
    そういった宇仁菅さんの曲への意見はこれまでもいくつか目にしたことあります(ニコ動とかで)から意外と好き嫌い分かれるスタイルかもしれないですね。

    ( 19:43 [Edit] )

  3. ゆにょ | -

    ゆにょ

    私は英語で投稿したかったのですが、あなたのブログは私を許しませんでした。 そこで、Google翻訳を使用しています。:D

    その最初のコメントは荒らしです。 私はそれを真剣に受け止めたり、丁寧に扱ったりしません。

    誰かが他の人を怒らせるように設計されたとりとめのない分析と思考に満ちた投稿にどのように応答できるかは、常に私にとって謎です。

    ( 23:23 )

  4. 管理人 | tCjwfjLE

    Yunyoさん、こんにちわ。

    私は別に荒らしコメントとは思わなかったですよ。しひとつの意見として受け止めました。
    その人への返信でも書きましたが感想は人それぞれ。10人が10人同じ感想になることはないです。
    私は”KNOCK ON NOX”がイマイチな曲だと思ってますが人によっては神曲だと思う人も多いでしょう。
    ある程度相反する意見を受け止める広い心も必要ではないでしょうか。
    ---
    Hello, Yunyo!
    I didn't think it was a troll comment. I took it as an opinion. I wrote in the reply to that person, but each person has different impressions. 10 people will not have the same impression. I think “KNOCK ON NOX” is a fucking song, but some people think it ’s a god song. I think it is necessary to have a broad mind that accepts conflicting opinions.

    ( 16:20 [Edit] )

  5. ファルコム音楽好き | -

    No title

    感想読みました。
    私はまだ聞いてないのでこれからですが、期待したいところです。
    コンポーザー評を読んで気になったのですが、ブックレットには曲毎に誰が作曲したか記載されているのですか?

    ( 21:59 )

  6. 管理人 | tCjwfjLE

    コメントありがとうございます。
    ファルコムは一切作曲者情報は明かしておらず残念ながらブックレットにはAll Music By Falcom Sound Team jdkとしか書かれていません。
    ただしこれまでのリークなどから確定した作曲者情報から個々の推測は十分可能です。
    詳しくはjdkManiacsという拙作Wikiにておこなっていますよ。
    ファルコム音楽好きさんにとって実りあるサントラだったら良いですね。

    ( 22:38 [Edit] )

  7. ファルコム音楽好き | -

    No title

    コメントありがとうございます。
    リーク情報とそのまとめサイトなんてあったんですね
    最近ファルコムのスーパーアレンジバージョンとサントラを何枚か聴いて神藤さんのファンになりまして主に神藤さん狙いでこれから掘っていこうと思ってたので、参加してるのかは気になるところでした。
    ありがとうございました。

    ( 18:21 )

  8. 管理人 | tCjwfjLE

    神藤さんももちろん参加されていますよ。ただ「HEART BEAT SHAKER」「CLOACA MAXIMA」「GLESSING WAY!」「STRATEGIC ZONE」の4曲だけと少ないのがとても残念ですが…。でも期待に応えてくれる素晴らしい曲ですよ。

    ( 23:19 [Edit] )

  9. ふぁるこん | ioClhu/2

    (非公開になってしまっていたので、再び遅らせて頂きます)
    長文失礼致します。
    こういった場でコメントをするのは初めてなので、拙い文になってしまったら申し訳ないです。
    ついこの前、jdk maniacs wikiに出会い、膨大な経験に基づいた分析力に感動しました。私はまだ、各メンバーの聞き分けがそこまでできない素人ですが、これから貴方のwikiを教科書にして、見識を広げていくつもりです。
    DESERT AFTER TEARSは、あと一押しあったら、まごうことなき神曲になっていたんじゃないかなと思いました、(逆に、完成度高すぎて、何加えても蛇足になるかもしれませんが)。
    ANIMA ERGASTULUMは、今作で一番好きです。ボスの不気味さ、おどろおどろしさを表現した前半、それでも勝たなくちゃいけないという強い意志、希望を表現した後半。起承転結がぎっしり詰め込まれた、流石園田さんって感じの曲でした。
    今回は宇仁菅さんの曲が少なかった分、園田さんがかなり頑張ってくださったと思いました。神藤さんは言わずもがな。
    最後に、「ファルコムだから、全てが名曲なのは当たり前」とか、「ギターが熱ければイース」みたいな人が多い中、冷静に分析、評価を下せるあなたのような人に出会えて、本当に良かったです。これからも頑張ってください。改めて長文失礼いたしました。

    追記
    思っていたよりばっさりと真我さんについて書いていて、思わず笑ってしまいました。 WELCOME TO CHAOSに は、真我さんの全てが刻まれていると思います。GRIA RECOLLECTIONAとかDREAMING IN THE GRIMWALDとかは普通に好きですが、曲の約半数が外注になってしまうぐらいなら、発売日の見直しなど出来なかったのか、などと思ってしまいました(音楽面では常に他社の先を行っているファルコムなら尚更)。

    ( 23:44 [Edit] )

  10. 管理人 | tCjwfjLE

    コメントありがとうございます、拙作Wikiもご覧頂けたようで恐縮です汗

    神曲の定義は人によるかと思いますが「DESERT AFTER TEARS」は確かに普遍的なキャッチーさは欠けるかもしれませんね。同じ宇仁菅さん作「SUNSHINE COASTLINE」のような人気は博していないようです。でもこの人を寄せ付けないようなその気高さがこの曲の抗いがたい魅力かなと思います。荒涼としたフィールドともこれ以上なくマッチしてましたしね。
    ANIMA ERGASTULUMは仰る通りボス戦曲に求められる条件をすべて満たした曲ですね。「PRISON OF BALDUQ -YEARNING-」メロディが勇壮に奏でられるところはいつ聴いても目頭が熱くなります。園田さんは昔からボス戦曲を担当することが多く聴かせどころが分かっているので安心出来ます。

    園田さんや宇仁菅さんといったjdkスタッフに関心頂けて嬉しいです。ファルコムは(リークなどを除き)基本的に曲別担当が公開されておらず全てjdkとして一括にされ誰がどの曲を作ったかは分かりません。結果功績が曖昧になり各スタッフが注目されることはないのですが最近はふぁるこんさんのようにこういった声も色々聴くようになって少し風向きが変わってきたのかもしれません。私としてはコンポーザーという業種はいくら社員とはいえやはりアーティストとして世間に認知され評価されて然るべきだと思います。なので嬉しい流れですね。

    真我さんについては曲作りの癖が強いので人によって好き嫌いはっきり分かれるでしょうね。アコースティックな曲やテンポの遅めの曲は私も評価しますがそれ以外は…。皮肉にもそれ以外の分野がウケがいいみたいですが…。外注に頼らざるを得ないのはゲームの規模とスタッフ人数が釣り合わない現状、致し方ないのですがこの方に関しては人選に難ありでしたね。

    激励のお言葉もありがとうございます。ま、冷静に分析出来ているかといえば少し私情入ったりと微妙なところもありますが(笑)今後も地道に頑張っていこうかなと思います。こちらこそ長々と失礼致しました。

    ( 09:22 [Edit] )

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