この間無事クリアしてトロコンも達成した『十三機兵防衛圏』。「CEDEC AWARDS 2020」にて「ゲームデザイン部門」「サウンド部門」の2部門で優秀賞受賞(最優秀賞ノミネート)という栄誉にも輝いた。早速オリジナルサウンドトラックも購入したので楽曲を振り返ってみよう。

13_ost_01.jpg

注)本文中にはストーリーのネタバレ要素はありません。

概観

楽曲制作は音楽制作会社ベイシスケイプ。サウンドディレクターは崎元仁氏、そして作編曲者として金田充弘氏、工藤吉三氏、渡邊里佳子氏、菊池幸範氏、東原一輝氏、千葉梓氏(以下敬称略含む)が名前を連ねている。ちなみに東原氏と千葉氏は今作の途中か終わったあとか分からないけど既にベイシスケイプを退社されているようだ。なのでこのふたりは他の方と比べて作曲数は少なくさらに千葉氏の曲を他者が編曲している例もある。ディレクターの崎元氏はオープニングと挿入歌、メニュー画面、ラストバトル、大詰めの曲とおいしいとこ取りの曲を作られていて作曲者としてもきっちり手腕を振るわれている。

13_ost_02.jpg

作編曲:工藤吉三=20曲/金田充弘=16曲/渡邉里佳子=14曲/崎元仁=10曲/菊池幸範=9曲/千葉梓=8曲(作曲のみ=4曲)/東原一輝=6曲(作曲のみ=1曲)

編曲:渡邉里佳子=2曲/金田充弘=1曲/工藤吉三=1曲/菊池幸範=1曲

正直なところプレイ中はあまりBGMは印象に残らなかった。強いて言えば最初の冬坂登校時の曲や校内での平穏な曲など日常曲は良いなと思えたぐらい。なので折角ちょっとお値段高めのサントラを買っても一部の曲しか楽しめないかなと思ってたけど全くの杞憂に終わった。全83曲をそれぞれ五つ星評価したら四つ星以上が44曲。普通評価にあたる三ツ星以下の二つ星評価や一つ星評価の曲は無し。アンビエントなイベント曲ですら聴き応えがあって類まれにみる良曲名曲尽くしの素晴らしいサントラでした。

今作ではまさにバックグラウンドミュージック的な曲が多くて明快にメロディアスな曲は少なめだけど退屈と思える瞬間は殆どない。どの曲も中身が濃くて興奮・癒やし・思索に満ち溢れていて否応なく感受性が刺激されっ放し。やっぱりゲームで聴いたときとサントラで聴いたときとは印象がガラリと違う(確かゲーム内のBGMは効果音やボイスの被りなどを考慮してダイナミクスを下げたり特定の音域をカットしてるのだったかな)。当たり前だけど全ての曲が十三機兵防衛圏の世界観とマッチしていて一瞬一瞬の音が鳴り響くたびにすぐにその情景が思い浮かびあの世界へ気分がトリップ。ゲーム音楽として最高の働きをしてくれている。サウンドもとてもきめ細かくて緻密。一粒一粒がクリスタルのように光り輝いているから音と音が織り成す彩に聴き入ってしまうばかり。ベイシスケイプ全員の技術レベルが非常に高いからこそだろう。飽きずに三周四周、五周と時間があればいくらでも聴けちゃいそうだ。

日常曲

13_003.jpg

全部の曲が好きだけど特にお気に入りなのはやはり何も背負っていない日常曲。大体において自分はこの手のアコースティックな緩徐系の曲を好む傾向があるけど今回も同様だ。

ハートフルで後半の白昼夢的な雰囲気が印象的な「In the Doldrums」(作:渡邉里佳子)、爽やかな朝露感じさせる「Mornin', Sunshine!」(作:金田充弘)、長閑で伸びやかなクラリネットが気持ちいい「Halcyon Days」(作:工藤吉三)、ギターとベースサウンドが心地良く愉悦さ溢れる「Good Times」(作:千葉梓)、アンニョイながらエッジ効いたチェロがスパイスの「Taking It Easy」(作:渡邉里佳子)、小洒落て愛らしい「Forty Winks」(作:渡邉里佳子)、清爽で輝かしい「Bright Days Ahead」(作:千葉梓)、リリカルでメランコリックな「BUDDIES」(作:千葉梓)、甘く切ない「Feeling at Ease」(作:渡邉里佳子)、心が洗われるような柔和さが心地良い「Fancy Some Tea?」(作:千葉梓/編:工藤吉三)、暖かいけどふと沈み込むような陰影が印象深い「Bittersweet Sorrow」(作:千葉梓/編:菊池幸範)が気に入っている。その中でも「Bright Days Ahead」はゲーム中でも特にピアノのメロディが印象に残っていてこの曲をちゃんとした音質で聴きたいがためにこのサントラを買ったようなもの(少し大袈裟)。サイドでコロコロと転がる音とトランペットの伸びやかな響きがまた快い。ただ曲の尺が長めだからリピートしてくれていないのが残念!いくつかの曲がこの曲の素敵なアレンジになっていたのは嬉しい贈り物だった。

機兵戦曲

13_041.jpg

一転してシンセが軋めくテクノポップサウンドへ。アコースティックサウンドとのコントラストが効いてて飽きさせないナイスなコンセプト。こちらもどの曲も素晴らしいけど終盤使われた「-[DEOXYRIBOSE]-」(作:工藤吉三)と「-{EDGE OF THE FUTURE}」(作:崎元仁)は異彩を放つ存在感。「-{EDGE OF THE FUTURE}」はイントロのOPメロディが引用されたシンセサウンドから胸高鳴るが中盤で重厚なオーケストラサウンドが押し寄せ特に3:26あたりから盛り上がるオーケストラのうねりがすごい。作曲した崎元仁氏はもちろん昔から存じていたし『戦場のヴァルキュリア』もプレイ済みだけどこれまであまり氏の曲に縁がなかった。今回改めて氏のすごさを思い知る。ベイシスケイプのメンバーは全員スキルが高いけどやはり崎元氏は格が違う。

この曲以外だと「(VALINE)-」「-(ISOLEUCINE)-」(作:工藤吉三)と「-(LYSINE)-」「-(PHENYLALANINE)-」(作:金田充弘)がキャッチーさと格好よさがあって痛快。機兵戦曲は基本的に中盤からギア上げて盛り上げにかかるけど工藤氏と金田氏の曲は特にこの展開が聴かせ上手。ディスコ調な「-(THREONINE)-」(作:渡邉里佳子)やオリエンタルさが漂う「-(TRYPTOPHAN)-」(作:渡邉里佳子)、メロディックと無機質のぶつかり合いが気持ちいい「-(HISTIDINE)-」(作:菊池幸範)も良かった。

惜しむらくはコンセプトとしてゲーム中の機兵戦の展開がそのまま曲に盛り込まれているので戦闘勝利BGMもシームレスに一緒になっていること。盛り上がっている最中に突如異なる曲調に変化して終わるのでちょっと調子が狂う。でも何度か聴いているうちにこれはこれで起承転結ついて良いのかなと思えるようになったかな。

それにしてもプレイ中、こんな激しい曲が流れてたっけってなる(笑)

イベント曲

13_006.jpg

残りの曲全部、と言いたいところだがさすがにきりがないので。最早日常曲とイベント曲の境目も曖昧だが。

得体の知れない怖さを感じさせる圧の強いイントロがプレイ時から印象に残っていた「Lonely Struggle」(作:渡邉里佳子)、壮大で不穏なサウンドだけど途中テンポアップするような部分が面白い「IMMINENT」(作:工藤吉三)、ひたすらに痛切なストリングスと慰めるようなボカリーズが鳴り響く「Self Sacrifice」(作:工藤吉三)、沈潜としたストリングスが印象深い「A Brave Gene」(作:崎元仁)、まさにSFチックなサウンド「SEEKER」(作:金田充弘)、音選びが好み「The Plot Thickens」(作:渡邉里佳子)、鬼気の嵐「Metal Demon」(作:金田充弘)、穏やかで優しい「The One」(作:菊池幸範)、内に秘めるパッション「RESOLUTION」(作:東原一輝)など珠玉の楽曲の数々に聴き惚れるばかり。

イベントで流れる曲ではないけどメニュー画面曲の「Voyage to Tomorrow」(作:崎元仁)はプレイ中に聴いたときは大して印象に残らなかったけどこうしてサントラとして聴くと綿密に作られていて聴き応えある。逆に印象に残らないのは正解かもしれない。色々作業したり読んだり考えたりするメニュー画面曲として下手に引っかかりがないように作られているのかもしれないな。

ところで「Staring Into the Void」は0:47から少し J.S.バッハ の平均律クラヴィーア曲集第1巻1曲目BWV846のフレーズが入っているような?ある意味このゲームも思索的であり哲学的でもある内容なので同様に深遠なバッハの曲を引用した、というのは考えすぎか。

まとめ

13_ost_5.jpg

繰り返しになるがトータルでの完成度が並外れてて改めてすごいの一言。ゲームもすごいが音楽も並外れてすごかった。あの世界観を思い耽りながら今後も聴き続けたい。

複数人で作曲をしているのだけどムラがない。仮に作曲者を隠して聴いたとしても複数人で作っていると分からないぐらいだ。ひとりが飛び抜けていたりひとりがやや劣っていたりすることがなくこれがプロの一流の仕事なんだと感心した。ただまだベイシスケイプの楽曲を聴いて日が浅いからいずれブラインドでも分かるようになるのかもしれないが。例えばこれがファルコム曲だとFalcom Sound Team jdkメンバーそれぞれが独自のサウンドを持っていて決して寄り添うことなく個性を曲げないからサントラとしての完成度にバラつきが出る。ま、ある意味個人プレーが出来て自由度が高いとも言えるから一長一短なのかな。

ベイシスケイプはこれまで自分のゲーム歴ではほぼ縁がなかったけど今後今更ながらだけどもっと追っていきたい。ということもあって今はVita版『朧村正』をプレイ中。次は『オーディンスフィア』『ドラゴンズクラウン』になるかな?。どんどん過去を掘り下げてお宝を探していこう。

関連記事
  • web拍手 by FC2
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


コメント

    コメントの投稿

    (コメントの編集・削除時に必要)
    (管理者にだけ表示を許可する)


    トラックバック

    Trackback URL
    Trackbacks